愛媛県は現在、最新のデジタル技術を活用し、「行政」、「暮らし」、「産業」の分野において変革をもたらす、「愛媛県デジタル総合戦略(仮称)策定プロジェクト」に取り組んでいます。全国の自治体に先駆けたこの政策は、将来、県民生活の質の向上や県の産業の活性化につながることが期待されます。
また愛媛県は令和2年(2020年)から民間企業と協働でプロジェクトを開始。現在、「楽天シニア」と協働して進めている「スマートフォン教室(以下、スマホ教室)」もプロジェクトのひとつです。
そんな、革新的な政策の推進を担う愛媛県 企画振興部 政策企画局
総合政策課デジタル戦略室企画グループ担当森俊人(担当係長)さん、渡部友里(主事)さんのお二人に本プロジェクトの詳しいお話を伺いました。
前編では、誕生の背景から現在の取組み、そして「楽天シニア」との協働事業をご紹介します。
「デジタル戦略室」の誕生の背景をお聞かせください。
森
愛媛県では、地域課題の解決にデジタル技術を積極的に活用するため、全国に先駆ける形で、平成30年(2018年)4月にデジタルマーケティングの専担部署となる「プロモーション戦略室」(当時)を立ち上げました。私は創設時のメンバーの1人です。
当時は台湾便の就航間近といった背景もあり、インバウンド誘客を一つの切り口としてモデル事業の展開に取り組み、加えて、愛媛県の強みである「しまなみ海道」をフックとしたサイクリストの誘致や、「楽天」さんと取り組んでいる県産品の販売促進などでデジタルマーケティング手法を活用したプロモーションの高度化に力を入れてきました。
それから2年が経ちますが、デジタル技術はどんどん進んでいます。これからはマーケティング分野だけではなく、県政のより幅広い分野についてデジタル技術の導入を県庁全体でしっかり取り組んでいこうという機運が高まりました。
そこで、令和2年(2020年)の4月、「プロモーション戦略室」を発展的に改組した「デジタル戦略室」が生まれました。私たちは現在、デジタル技術も手段として活用しながら、地域課題の解決、県民の利便性の向上、安全・安心の確保、県内産業の生産性の向上につなげていくということを目的としまして、デジタル総合戦略(仮称)の策定を進めております。(詳しい情報はこちら )
「デジタル戦略室」を立ち上げてから現在までの手応えはいかがでしょうか。
森
私たちは全国的にも先駆けてやってきているという自負はあります。
ただ、私自身は元々デジタルに強い人間ではありません。また、立ち上げ当初は、庁内から理解を得るのは難しく、地道に理解を求めながら進めてきました。
デジタルに対して県庁全体の知見が深まっていると強く感じたのは、昨年から拡大している新型コロナウイルス感染症がきっかけです。コロナ禍の社会においては、行政全般のデジタル化の遅れを痛感しました。
しかし、愛媛県では、これまでの実施成果を踏まえ、県内事業者の皆様への支援に当たっても、デジタルマーケティングの手法をより効果的に活用させて展開していくことができたところがあったかと思っています。
今、政府はデジタル庁創設をはじめ、DX(デジタル・トランスフォーメーション)に強力に取り組んでいますが、私たちが「デジタル戦略室」を立ち上げたのは、今年度4月。愛媛県では、コロナ禍の前にそうした意識を持って取り組んでいたことで、国との動きにあわてることなく取り組んでいると考えています。
今回の「楽天シニア」との取組みは、コロナ禍と別軸で日本全体の高齢化社会という大きな課題があると思いますが、高齢化に対してデジタルの活用にいち早く取り組んでいる背景を教えてください。
森
デジタルデバイド(情報格差)の解消については、地域課題として以前から捉えておりました。
現在、愛媛県では、スマホアプリのLINEを活用した本県独自の接触確認システム「えひめコロナお知らせネット」を、厚生労働省のCOCOA(新型コロナウイルス接触確認アプリ)との併用により、コロナ禍にしっかり立ち向かっていこうとしています。
そして、私たちが特に守らなくてはいけない人たちが、高齢者の方々です。しかし、スマホ中心の施策になっているにも関わらず、肝心の高齢者の方のスマホ取得率やデジタルリテラシーの低さは客観的に明らかです。
私たちは、高齢者の支援に直ちに取り組まなくてはとの想いで「愛媛県高齢者デジタルシフト支援事業」を始めました。
昨年から始めた「スマホ教室」について教えてください。
渡部
「スマホ教室」は、県内の高齢者の方を対象に、スマホ所有の有無、機種やキャリアを問わずに参加ができるようにしています。
実際に教室を始めてから参加者の傾向など分析を進めていくと、スマホを持たれている方であっても、基礎的な操作でつまずかれる方が思ったよりも多くいらっしゃることが分かりました。また、端末によって操作方法の違いもあり、一人ひとりに寄り添った対応が必要と感じました。
講師の方には時間をかけて丁寧に説明をいただいておりますので、「スマホ教室」を通じて、まだスマホを持たれていない方にも、お試し端末を活用しながらスマホデビューのきっかけにしていただけたらと思っております。
「スマホ教室」事業はまだ中盤ですが、周りの変化や評判などはありますか。
森
嬉しいことに、高い評価をいただいております。参加者も、やはり自ら足を運んで来ていただく方達ですので、学ぼうという姿勢が感じられます。
高齢者ということで、対象を65歳以上としておりますが、平均的に75歳を超える方の参加者が多く、中には80歳の方も来られています。
想定していた以上に高齢の方が「学びたい」、「自分たちも使えるようになりたい」と考えておられることに気づくことができ、今後の施策にも活かせると感じられて良かったです。
渡部
私も参加者の年齢層を分析したとき、75歳以上の方の参加が多いことに驚きました。
実際に「スマホ教室」を見学しましたが、大きなメモの束を持った方、食いつくように講義を受けられていた方、事前にたくさん質問を用意されている方がいらっしゃったので、意欲が非常に高いという印象を受けました。
森
「スマホ教室」の開催に加え、コロナ禍での「新しい生活様式」において「楽天シニア」さんのツールを効果的に活用して、利用促進につながることも期待しています。
コロナの影響が想定していた以上に拡大しており、接触を避けるため「スマホ教室」に参加したくてもやむなくできないという方もいらっしゃるので、その点は残念な思いもありますが、県としてできる限りのことをやっていきたいです。
高齢者の「デジタルシフト支援」など、県全体でデジタル変革を目指すという先駆的な政策に取り組む愛媛県の「デジタル戦略室」。後編では、愛媛県の強み、森さん、渡部さんの抱負や「楽天シニア」との今後の展開を紹介します。
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