人生100年時代といわれる中で、元気に長生きできるように「健康寿命」を延ばすことが意識され、そして好きなことができるように「資産寿命」も延ばす必要があるといわれています。
とはいえ、資産運用で失敗しては元も子もありません。このシリーズでは、本当にあったシニア世代の失敗事例を取り上げ、やってはいけなかった行動と、解決の手段を紹介します。
新興国といえば、日本をふくめた先進国に比べて高い成長が期待され、中国・インドを筆頭に著しい経済成長が続いています。実際に現地に旅行された方なら昔と比べて現地の変化に驚いた方も多いのではないでしょうか?
しかし私たちが資産運用で新興国に投資する場合は、単に経済成長だけをみて投資することは危険です。シニア世代においては、値上がり期待よりも安定した金利収入が欲しいと新興国通貨建ての債券や投資信託に投資している方と面談する機会が多くあります。
その際資産の状況をお伺いすると、新興国への投資で大きな損失となってしまった方が大半です。ではなぜそうなってしまっているのでしょうか?
まず、各国の金利情勢(政策金利)を確認して見ましょう。

※ 出所:各国中央銀行(2020年3月16日時点)
上図のように、各国の政策金利を比較すると先進国に比べて新興国の金利が際立って高いことがわかります。その点は投資する上で魅力的ですが、私たち日本人が投資する時には大きく分けて2つのことに注意が必要です。
- 日本円から新興国通貨に投資する際の「為替手数料」
- 新興国通貨の対日本円からみた「為替リスク」
一つ目の「為替手数料」ですが、たとえば米ドルの場合、1ドル=108円とすると銀行窓口なら1円、ネット証券なら25銭程度の手数料(片道、円→外貨)というケースが多いようです。つまり、為替手数料が1円なら片道で0.94%、25銭なら0.24%程度の手数料がかかることになります。
それに比べて新興国通貨の手数料がどの程度かかるのか?一覧にしてまとめてみました。

※Investing.comより、2020年3月16日時点の為替水準を参照
※銀行窓口手数料は、三菱UFJ銀行、その他手数料は楽天証券のネット参照為替を適用
明らかに新興国通貨の為替手数料が高いことがわかります。さらに新興国通貨を日本円に戻す往復分の手数料を考えると2倍の手数料となります。それも考えても金利に旨味があるのか、しっかり考えて投資をする必要があります。
そして二つ目の「為替リスク」ですが、こちらも米ドルと他の通貨を比較してみました。

※2005年1月の為替を100とした時の推移
※月末の為替を参照、2020年3月は3月16日終値を参照
2008年9月のリーマンショック以降、金融不安で世界の株価が暴落しただけでなく、円高が進行したことで外貨に投資をしていた方は大きな損失をこうむりました。しかし2014年以降はアベノミクスと呼ばれた金融緩和の効果もあり、先進国通貨は対円で大きく上昇しましたが、新興国通貨は対円で下落し続けており、このせいで新興国通貨に投資をしている人は大きな損失となって困っています。