人生100年時代といわれる中で、元気に長生きできるように「健康寿命」を延ばすことが意識され、そして好きなことができるように「資産寿命」も延ばす必要があるといわれています。
とはいえ、資産運用で失敗しては元も子もありません。このシリーズでは、本当にあったシニア世代の失敗事例を取り上げ、やってはいけなかった行動と、解決の手段を紹介します。
iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)というと、現役世代の方が将来の資産形成に使うというイメージが強いようですが、実際にはシニア世代の方が老後を見据えて利用するのにも有効な制度です。
定年が60歳だった以前に比べ、だんだんと就労期間も延びてきています。それに合わせて、2022〜2023年にはiDeCoの掛け金積立期間も5年間延長されて、65歳まで加入ができるように法改正が検討されています。
現在でも掛け金の積立ができるのは60歳までですが、運用自体は70歳になるまで可能です。そもそもiDeCoの、「掛け金分の所得控除」「運用益の非課税」「受給時の税控除」など優遇措置は年齢に関係ありません。
年々平均寿命が延びているということは、生活に必要なお金も増えることに繋がります。そこで今回は、シニア世代の方が老後を見据えてiDeCoを上手く使うための知識と注意点をお伝えしたいと思います。
確定拠出年金「個人型のiDeCo」と「企業型のDC」
個人型の確定拠出年金であるiDeCoを始める前に、DC(企業型確定拠出年金)と比較しておきましょう。そもそもiDeCoに加入しようとする時も、勤め先に加入可能かどうかを確認する必要があります。
iDeCo (個人型確定拠出年金) | DC (企業型確定拠出年金) | |
---|---|---|
加入方法 | 個人が任意で加入 | 会社が退職金制度として導入している場合に加入が可能 |
掛金 | 自分が負担 | 会社が負担(自分で追加投資が可能な場合も) |
納付方法 | 自分の口座から振替が多い | 会社から納付 |
金融機関の選択 | 自分で選択が可能 | 会社が選択 |
運用商品 | 自分で契約した金融機関で用意している商品から選ぶ | 会社が用意している商品から選ぶ |
口座管理料 | 自分が負担 | 会社負担のケースが多い |
加入費用の視点で考えると、iDeCoよりもDCを優先した方が有利に見えます。しかし、選択できる運用商品の種類や運用費用を考えると一概にはそうはいえません。両面から考えて自分にとって良い選択肢を見つけましょう。
iDeCoのメリット・デメリット
iDeCoもDCもお金の「入り口」「途中」「出口」という3つのポイントで税金の優遇があります。ここでは、iDeCoについてのメリットとデメリットをまとめました。
まずは主なメリットです。
- ① 入り口:拠出金が所得控除になる
- 年末調整や確定申告によって拠出金分の所得控除を受けることができるため、所得税・住民税の納税額を減らすことができます。減額される納税額は掛けた金額と収入によって変わります。残念ながら所得がない人にとってはメリットにはなりません。
- ② 途中:運用益が非課税となる
- 運用期間中に受け取る利息・配当金、また投資商品の値上がりによる売却益が、非課税となります。約20%の税金が掛からないという大きなメリットです。
- ③ 出口:受給時にも節税メリットがある
- 最終的に一時金で受け取る場合は、退職所得控除の対象となります。年金方式で受け取る場合は、公的年金等控除の対象となります。ほとんどの場合は退職所得控除を選択する方が大きな税制メリット受け取ることができるでしょう。
次に主なデメリットについても、説明します。
- ① 原則60歳まで資金を引き出せない
- 60歳になるよりも早い時期に、拠出するお金を使う予定がある場合は、iDeCoではなく、NISAやつみたてNISAで運用した方が良いでしょう。くわえて加入期間が10年未満の場合は受給開始が60歳を超えることになる点には注意が必要です。
老齢給付金の受け取り開始可能年齢
受け取り開始可能年齢 | 必要な通算加入者等期間 |
---|---|
60歳 | 10年以上 |
61歳 | 8年以上10年未満 |
62歳 | 6年以上8年未満 |
63歳 | 4年以上6年未満 |
64歳 | 2年以上4年未満 |
65歳 | 1か月以上2年未満 |
- ② 運用結果によっては値下がりすることもある
- 運用といっても当然ですが、必ず資産が増えるとは限りません。残念ながら値下がりする可能性もあります。どうしても運用リスクを取りたくなければ、iDeCoで定期預金(もしくはそれに準ずる商品)に加入することもできます。
- ③ 運用とは別に事務手数料などがかかる
- 事務手数料にはいつくか項目がありますが、主なものは運営管理手数料です。ただし、楽天証券など一部の金融機関では運営管理手数料を無料にしています。それでも加入中には、国民年金基金連合会や信託銀行に月数十〜数百円程度は支払う必要があります。