「宇和島市役所地域包括支援センター」インタビュー

宇和島市が構想する、デジタルを活用した健康長寿のまちづくり

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愛媛県南西部にある宇和島市。宇和海と鬼ヶ城山系に囲まれた美しい景観、多種多様な柑橘類をはじめ、日本有数の生産量を誇る真珠、養殖のタイやブリといった特産品。さらに名物の「鯛めし」や「じゃこ天」など食においても全国的に有名な街で生まれた「うわじまガイヤ健康体操(以下、ガイヤ体操)」をご存知でしょうか?

高齢者の健康向上と地域コミュニティを盛り上げるため、宇和島市地域包括支援センターが作ったご当地体操です。市民、特に高齢者の健康に力を注ぐ地域包括支援センターは、最近デジタル技術を活用して市民の健康を守るべく、ヘルスケア施策を目指しています。

今回は、岩村さん(保健福祉部 高齢者福祉課 地域包括支援センター所長補佐)に宇和島市の取り組みやガイヤ体操の誕生経緯、高齢者介護とデジタル化についてお話を伺いました。

岩村さんが市役所で働くことになったきっかけを教えてください。

岩村私は元々宇和島市の出身で、また、両親から「地元に戻ってきては」という助言もあり地元での就職を選びました。

市役所では、これまでどのようなお仕事をされていましたか?

岩村今から27年ほど前、私は農業委員会という、農協や農地の営業、畑など許可を行う部署で働いていました。当時は「決まった仕事をするだけだ」と考えており、行政職員として果たすべきミッションが何かを全くわかっていませんでした。

それから7年経った時、私に転機が訪れました。公民館で地域の生涯教育を行うことになりました。そこでは自分1人で全ての事業を考える事や地域業務を行っていたのですが、その仕事に面白さを感じました。「公務員の仕事とは何か?誰のために働くのか?」という本質に気づき、意識が変わりました。

当時、地域の皆様と仲良くさせていただき、高齢者ともコミュニケーションを取っているうちに、「皆さんに喜んでいただけることは何か?」を学びました。そして、10年の市立病院の勤務を通して皆さんがどういう病気を罹っているかを学び、それに対する余病をどうしていくかなどを含めた“高齢者支援”にたどり着きました。

その経験から、ガイヤ体操が生まれたのでしょうか?

岩村当市は平成28年度において介護認定率が23.3%と、県内で3位の高さであり、市民の健康状態が良いとは決して言えない状況でした。当時の上司から学んだのですが、介護予防は、「こういうことをやればという科学的な根拠が少ない」ということを聞かされました。たしかに、人によって「自分が好きなことをやれば足腰が丈夫になります」といった話はあります。

しかし、行政としてはちゃんとした柱を作らなくてはいけないと思い、高齢者の身体機能の向上を目的としたご当地体操、「うわじまガイヤ体操」を作りました。

作成された井門恵理子先生(元環太平洋大学講師)から「市民になじみのある曲をBGMに」とのご要望があり、宇和島市の夏祭りで使用される「ガイヤ・オン・ザ・ロード」をベースで作成いただいています。

そのような誕生の経緯があったのですね。現在では、「うわじまガイヤ健康体操協力団体」と団体が生まれておりますが、活動はどれほど拡大されていますか?(参考動画

うわじまガイヤ健康体操参加者の方々

岩村どの市町にも「わがまち体操」はありますが、製作後の普及で苦労していると思います。

せっかく作ったご当地体操であり、長く使ってもらいたいと考え、2世帯5人以上の「うわじまガイヤ健康体操協力団体」組織として団体で実施することで、商品券に交換可能なポイントがもらえる「ガイヤマイレージ制度」とセットで普及を始めました。おかげさまで現在団体は100団体、2,000人の方がガイヤ体操を実施されています。

「ガイヤ体操」や高齢者のヘルスケア事業をどのようにデジタル化したいとお考えですか?

岩村ガイヤ体操を開始して5年目を迎えましたが、介護認定率は改善傾向にあり、現在20.5%まで改善しています。しかし、残念ながらこの状況がガイヤ体操によるものかは不明です。今後はガイヤ体操による身体状況の変化を検証したいと考えていますが、個人別のヘルスケアデータの収集には大きな労力がかかります。

市内の高齢化率については令和3年2月1日現在で39.4%であり、まもなく40%を超えることになります。スマホが有利であっても、高齢者、65歳より上の方にはアプリ一つもいれられない方も多くいらっしゃいます。市民に負担をかけることなくバイタルデータなどの収集が出来る仕組みを、デジタルで行っていきたいと考えています。

デジタル技術を活用して、市民が健康管理できるものを提供したいとお考えなのですね。

岩村実は、昨年末に将来的な疾患傾向が分かる仕組みを共同でヘルスケア施策作りを行っている先生方(病院、大学医学部)に作っていただきました。要介護につながる疾患である脳梗塞リスクなどがエクセルのマクロによりわかるようなものです。私は、それをアプリにしたいと思っていました。昔、実際にエクセルでやろうとしたのですが、作業量が多く「無理だ」と諦めたのですが、デジタルに組み込めたら、ある程度、数字的にわかるのではと考えています。

また、介護認定率は改善傾向にあります。市民の健康状態についても、この人は教室に多く参加しているから数値が良いなど、健康状態や医療費を、行っている人と行ってない人の効果の比較ができると思っています。

しかし、そんな話を先生方にした時に、「やめたほうがいいですよ」と言われました。先生方の経験上、やはり高齢者自身がそれを使うのは難しいと皆さんお考えのようです。

どのようなデータの収集や健康管理システムを提供したいとお考えですか?

岩村ガイヤ体操を実施されている2,000人の方のデータを最低1年、可能であれば継続的に5年ほど見たいです。今、ガイヤ体操は介護事業者さんを含め、60を超える教室で実施しています。しかし、教室によってはオリジナルの内容に変化しているところもあり、参加者の健康状態を単純に比較することは難しいです。どの教室の方法がより健康に良いかなど、デジタル化し、比較できればとも考えています。

そして、今、宇和島市は高齢化が課題になっています。2040年の推定人口では現在から9,000人減ると予想されています。現状は少子化を防ぐための施策を展開しておりますが、間違いなく高齢化は進みますし、人口も減っていきます。

さらに全国的に見ますと、愛媛県は心疾患でお亡くなりになる割合が多い地域です。脳梗塞と同様に血液や血管が原因ではないかと、素人ながら考えてしまいますが、主な原因は判明されていません。食生活に関しても、他の地域と比べても特に塩分を過剰摂取するような料理もなく、お刺身はよく食べられますが、他の地域でも食べられていますので、直接的な原因に結び付けられない状況です。

ガイヤ体操は足腰にいいのですが、心疾患の改善プログラムを持ち合わせていないので、何らかの形で毎日の血圧を調べていけば、この健康問題に対しても取り組んでいけるのではないかと考えています。

高齢者のデジタルデバイドにどのような問題を感じていらっしゃいますか?

岩村例を挙げると本市が実施している「うわじま歩ポ」については、スマホアプリと手帳への記載のどちらかを選ぶことになっていますが、インセンティブはスマホアプリの方が優位となっています。

当市のアプリに限らず歩くことによるインセンティブは様々な企業が提供しており、この取り組みは国民の健康改善へのきっかけになると考えていますが、アプリである以上インストールとログインが必要です。インストールでまずハードルがあり、その後のログインで更にハードルがあがります。第三者が初期段階でサポートが行えてもインストールまでとなり、ログインについては1回で終わらない場合も多く、この点において格差が生まれていると感じています。

高齢者の問題として、免許返納や身体機能の低下による移動困難者、具体的には買物弱者の発生が挙げられます。我々の世代であればスマホで注文から決済まで行えますが、高齢者においては出来ない人が多いのではないでしょうか?今後の本市においては60~70代と80代以上の高齢者において、デジタルデバイドが生活の格差につながると感じています。

そんな時に、ちょうど「楽天シニア」さんが実施している「スマホ教室」のことを聞き、私の夢も実現できるのではと考えました。

「スマホ教室」をご覧になられた率直な感想はどうですか?

岩村高齢者にスマホを教えることは大変で、なかなか誰も手を出せなかったのだろうと思っていました。やはりこういった事業を行える民間企業さんは宇和島の中では少なく、またボランティアではもちろんないですので、手間とコストを考えるとなかなかやれない事だと思います。

愛媛県と「楽天シニア」が協働で行う「高齢者支援」に期待すること、また、宇和島市の市行政によるIT化の課題はなんでしょうか?

今後について

岩村IT化の課題と言うよりは行政の構造的な話になりますが、これまで地方自治体は国が作った仕組みに沿い、丁寧な仕事をすることでその役割を果たしてきました。

しかし、近年このあり方が変化していまして、現在は地方自治体独自のアイデアによって自由な施策展開が可能ですが、かわりに職員のセンスが求められます。

その中で我々に足りないセンスを民間企業の皆さんに補っていただければ、小規模自治体でも先駆的な取り組みが出来ると思っています。理想とするのは自治体が求めるまちづくりと民間企業の利益の両立、いわゆるwin-winの関係性が生まれるのではないでしょうか?そういった取り組みを今後やっていきたいと考えています。

今後の宇和島市の展望や抱負をお聞かせください。

岩村「地方創生」の概念上、既に地方自治体間が施策作りにおける競争が始まっていると感じています。

特に、コロナ禍において社会の仕組みが大きく変わる中、デジタル技術は新たな施策にとって大きな武器になると考えています。ただしその武器を生み出し、使いこなすには職員の資質が求められ、このことは地方自治体の格差につながる恐れもあります。

その中で企業さんとの連携力を深めることは、地方自治体に足りない部分を補っていただける可能性を秘めており、私ども高齢者担当部門としては、この「連携力」をもっと高めて少子高齢化が進んでも、いつまでも生き活きと暮らせるまちづくりを推進していきたいです。

高齢者の健康に気を配り、宇和島市をより良いまちにしたいと強く考えている岩村さん。デジタル技術の可能性を信じ、高齢者支援への活用を目指しています。今後の岩村さんの挑戦や宇和島市が目指す高齢者デジタル施策を「楽天シニア」としても応援していきます。

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